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クラウドファンディング連動企画 ▽池袋の中華料理屋に住むミュージシャン清水煩悩の対談連載企画『 煩算 』+7 内藤学(むこうぎしサウンド代表・映像ディレクター)

「稀代の変哲」とも称され、水曜日のカンパネラ・コムアイなどからも称賛を得るミュージシャン、清水煩悩が対談連載企画『煩算』をスタート。

音楽家、囲碁インストラクター、武蔵野美術大学職員、一橋大学社会学研究科 博士号課程、僧侶、芸術家、俳優、ラジオパーソナリティーといった様々なジャンルの「巷の人」をゲストに迎えつつ、足したり引いたり掛けたり割れたりしながらトークを展開。

来年リリース予定の3rdアルバムやミュージック・ビデオへと繋がるであろう本企画。

清水煩悩が、何を誰と語り合うのか、CAMPFIREで開始された150万円クラウドファンディングと合わせて、是非とも注目してほしい。

9月に開始された清水煩悩クラウドファンディング終了まであと2日と4時間。12月10日の最終日まで毎夜連続で対談記事が公開!

第7弾は、清水煩悩と共作を続け、フォロワーには馴染みのあるむこうぎしサウンドの代表・内藤学をゲストに迎えた。

今回のクラウドファンディングと連なった様々な出来事をインディペンデントである彼らが、前・中・後編と制作/暮らしについて考えていく。

昨日公開された前編に引き続き、『煩算』第7話〈中編〉、お楽しみくださいませ。

 

12月8日公開の映像について

-映像はいつ撮影されたの?

煩悩:11月22日です。雪山で撮影する、MV『まほう』の予告映像的な。

内藤:雨が。

煩悩:雨が大変やったね。

内藤:あれは狙ってなくて。最初はピーカン、夏の空、くらいのイメージだったんだけど、いざ当日を迎えたら雨も雨、大雨でした。

煩悩:結果的に良かったよなあ。

内藤:そうだね、ロケーションと、ウンポポともマッチしてたんじゃないかな。

煩悩:雨降って大変やったんやけど、雨ってその瞬間のままやから、それがよかったなって思った。撮影自体は楽しかったよね。

内藤:順調に進んだね。雨ニモ負ケズ。

 

-その”ウンポポ”には「出てもらった」という感じ?

内藤:うん。何とか出てもらった。奥多摩の撮影のあと、最後に煩ちゃんが森をちょっと歩いてたじゃん、あの時だよね。

煩悩:撮影が終わって、みんなが片付けしてたときに、僕は森の中うろうろしてて。森にご挨拶じゃないけど…。撮影が始まる前に、森に「よろしくお願いします」っていう気持ちで5分くらいかけてお祈り的なことをした。それの「ありがとうございます」バージョンというか。そしたら、「なんかおる~」みたいな。森で撮影してるとき、僕のライブを何かが見てくれてた気がしてて。結構遠くにおったんやけど、目があったというか、存在に気づいて。びっくりした。びっくりして声も出やんくて。で、たぶんウンポポも同じような感じやったと思う。

 

とっさに「これは悪い生き物じゃないぞ」って気がして。とりあえず敵じゃないよってなんとなく言いたかったから、座り込んで泥だらけになってみたりして。それがウンポポ的にも、多分やけど、ちょっと安心してくれたっていうか、多分敵じゃないって伝わったんやなっていう感じがした。それが最初の出会い。

内藤:俺は、奥多摩の時はコンタクト取ってなくて、実際に会ったのがこの前のティザーの撮影の時だった。深夜に煩ちゃんからLINEがきて、それが「ウンポポが出てくれることになったよ」っていうラインだったんだけど。

煩悩:なんか、ウンポポに会ってすぐにはみんなに言えやんかった。やっぱりちょっと怖い気がしたし、みんなに言うのは一回やめておこうって。

内藤:すごい勢いで20通くらいLINEがきて。何の話をしてて、誰が出てくれるのか…それを飲み込めるまでに数日かかった。そもそも『まほう』のMVは、雪山で修行をしている主人公的な人がいるイメージだったんだけど、もう一人、登場人物はほしいよねっていう話はしてたけど。

-今回のために、ウンポポと打ち合わせ的なことはした?

煩悩:撮影については、ウンポポには「会えるかも」っていう感じやった。

内藤:未だかつてない体験でした。場所へ行ったはいいものの、演者が来るかどうかわからない。分からないまま、準備をして撮影に向かった。

煩悩:ぼくはもう一回会いたくて奥多摩に遊びに行ったんやけど、その時にも会えてたから…やっぱり、奥多摩の撮影の時にライブを見てくれてたんやと思うんよな。だから、ぼくのこと気になってくれてるんやろうなあって。それで2回目も会えてたから、たぶん3回目も会えるやろうなあと思った。

 

-2回目の時はどんな感じで会ったの?

煩悩:ただ一緒におるって感じ。喋るっていうわけでもないし、一緒に歩いただけ。距離は縮まったかなあ、遊んだっていう感じやったかも。特に何もしてないけど、すごく嬉しかった。言葉なくコミュニケーションを取るっていうのが楽しい!っていうか。怖いっていう気持ちもなかったし。

内藤:俺も「怖い」っていう気持ちは不思議となかったかも。ティザー撮影は正直、来る/来ないで五分五分だと思ってたの。だから、来なかったら来なかったでその時は…って思ってたのね。だから来てくれたときはちょっとびっくりはした。

煩悩:ぼくは9割9分来ると思ってた。撮影は1日くらいかかった。ウンポポと会えるとは思いつつ、何の連絡手段もなくて、待つしかないっていう感じやった。唯一やばいなあって思ってたのは、いつも晴れた日にウンポポに会ってたから、雨の日ってどうなんやろうって。それが9割9分の残りの1分。でも来てくれるやろうなあって思ってたから、みんなにも「大丈夫大丈夫、待ってたら来るから」って言い続けてたんやけど。でもめちゃくちゃ待ったよね。

内藤:日が暮れるぎりぎりまで待ったね。

煩悩:会えた勢いでめちゃくちゃテンション上がって、撮影場所にポスト忘れてきた(笑)。テンションがかなり上がってたんかも。そういうのも含めて楽しかったなーって。

 

最後の方の大雨っぷりはまじでやばいなって思った。俺が折れそうになった瞬間もあった。

内藤:ウンポポの出演はなしで、っていうのも一瞬よぎったよね。実はそういう撮り方はしてて。万が一ウンポポが来てくれなかった時のことも考えた。

 

“ウンポポ”について

-そもそも”ウンポポ”って?

煩悩:いや、ぼくが勝手に呼んでる。ウンポポっぽいなあと一瞬で思いついて、名付けてしまおうって。ちなみに、ウンポポは「たんぽぽ」と同じ発音ね(笑)
内藤くんには最初から「ウンポポがね、」ってLINEしたよね。

内藤:そうそう。それもあって咀嚼に時間がかかった。知り合いの話するみたいなテンションで送られてきたから。

煩悩:ウンポポのことを表現する代名詞が難しかったから、これは今後も名前があるほうがいいなあと思った。ぼくは会った時に一瞬で、自分の音楽や映像に多少なりとも興味を持ってくれてる気がしたから、「MVに出てほしいかも」みたいに思った。もしそんなことできたら素敵やろうなあって。だから内藤くんにウンポポの話をした。

 

内藤:俺の知らない人をいきなりあだ名で紹介された感じ。しかもその具体的な説明もなかったし。でも、清水煩悩と一緒に作品を作っているとそういうシーンが結構あって。ちょっと時間を使うと、段々わかってくる。これもきっとそのタイプのやつだ、と思って、あえて深くは聞かなかった。ちょっと時間かかったけど。

煩悩:内藤くん優しいなあって思った。人によっては「はぁ?」ってなったりするから。

内藤:時間をかけたら、雪山MVの登場人物になるなぁっていうのも想像できた。

煩悩:内藤くんとは雪山で『まほう』のMVを撮るまでに、何かしら予告編みたいなのは作りたいねって言ってて。それが上手く合致したかなっていう、はまった感じ。それも全部考えたら、奥多摩の森のライブがあったのは大きかったなあって思って。今回のクラウドのきっかけにもなってるし、色んな事が動き出したなぁっていうのがある。

内藤:煩ちゃんがいつの日か、奥多摩の映像をTwitterかなにかでリンク貼って「すべてはここから始まった」ってつぶやいてて。

煩悩:そんなかっこいいこと書いてた?(笑)

内藤:書いてたよ。いいな、って思いました。確かにって。

 

煩悩:あの奥多摩のライブがゴールやったし、スタートラインになってる。それをスタートラインやって思えるのがすごい幸せやなって。あそこで終わらんっていうか、もっとやりたいって思ったんよね。

-雪山のことはウンポポに伝えた?

煩悩:全然言ってない。それこそやばいよな。来てくれるかなあ。あ、でも雪山のロケハンに行くときに何か雪山の目印になるもの取ってきて森には持っていこうかなあとか思ってる。でも、それじゃ伝わらん気もする。

内藤:どうなるかなあ、という気はしている。

煩悩:雪山での撮影自体が1日じゃ絶対終わらへんし。MVではあるけど、映像でもおもしろいのがいいよねって言ってるから。奥多摩の撮影も、強行突破で30分一発どり、1テイクしかしてないから…あれであそこまでの時間がかかってるって思ったら、雪山の撮影はすごく時間がかかるやろうから、ペンション的なのにこもって何日かかけて撮影することになると思う。そういうのも含めての制作資金やからね。

とにかく、雪山のMVについてはいい映像を撮ろうっていう話をしてる。だから時間もかかるし、もともと考えてなかったウンポポが話として混ざってきてるから更におもしろいことになってるし。その分大変にもなってるから…大変です!

-不確定要素があることに対する不安は?

煩悩:ぼくはない!

内藤:俺は結構ありますよ。映像を作ることに対して、打算打算でやってますから。

煩悩:そこが逆っていうか。よく叱ってもらってる。音楽をやることも映像を撮ることも似てる気がする。だけど、こんなにお互いで違うっていうのはすごくおもしろい。ぼくは基本的に、できると思ってるんですよ、全部。最近自分で気が付いたのが、全部できると思ってやって、できやんこととかってあるねん。失敗っていうやつ。それも好き。だから絶対やろうって思う。やった後の失敗が好きなやつやったら、そりゃやろうっていうよね。やらんより全然好き。やらんと我慢するのは無理。

 

煩悩:クラウドファンディングだって、言ってしまえば無茶やん。でも、クラウド初めてからの70日、何もやってなかったって考えたら、普通にアルバイトして普通にご飯食べて、多分ぼくは1曲も新曲も書いてないと思う。今も次のアルバムに向けて新曲を書いてたりするんやけど、もっとかけてないと思う。だからぼくは、やってみたい。

内藤:思い出したよ、ウンポポの話を最初に聞いたときにちょっとモメたこと。ウンポポが現場に来てくれたからすっかり忘れてたけど。

煩悩:そう。内藤くんは最初反対してたんよな。ぼくは、ウンポポと映像作れると思ったし、こんな機会はないって言ったら失礼やけど、おれはウンポポのことが好きやったから話そのをしたら、内藤くんは現実的じゃないって。

内藤:不確定要素が多すぎて、来るか来ないかわからない時に、俺がディレクターとして映像を撮る以上、上手くいくっていう打算をもってやろうとは言えないっていう話をして。

煩悩:それにぼくは、上手くいくからやろうって言い続けた(笑)。

内藤:そう。その一点張りがなかったら、全然こうなってないから感謝してる。

煩悩:その「うまくいく」も、全部込々の「うまくいく」で言ってるから、迷惑かけたなって。この場を借りて陳謝いたします(笑)

内藤:でもいいバランスだと思う。俺も知らないこととか、バランスの取れないことを「やろう」とは言わないし。

煩悩:でも悩む。内藤くんにそうやって言われたときも「ごめんな」って思うんやけど、それさえも振り切ったワンマン野郎のほうが内藤くんのこと救えるんじゃないかと思って。ウンポポについても、経緯とか話さず突然しちゃったからね。

内藤:結局来るか来ないかわからないことは変わらなかったわけだし、それを、俺の言葉で言えば完全に「強行」して進めるっていうのがね。でも煩ちゃんは9割9分来てくれるっていうから、俺もやろうって思ったしやってよかったなって思ったよね。

煩悩:うんうん。

 

(後編に続く)

Interview|Yamaguchi Nanako

Edit Assistant|Baba Satomi

Photographer|Naito Manabu,Yamaguchi Nanako

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残12日!【清水煩悩3rdアルバム&MV制作】奈良県天川村レコーディング!雪山でMVを撮りたい!

https://camp-fire.jp/projects/view/198665

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Profile

映像ディレクター
内藤学(Naito Manabu)

1992年東京都中野区出身。日本大学芸術学部を中退後、テレビアニメーション業界を経て、映像制作会社でディレクターとして活動する傍ら、インディーズでの映像制作にも取り組む。
清水煩悩との第1作目、「大天国」official music videoは国内外のコンペティションに出品中。今夏より、「むこうぎしサウンド」と題したプロジェクトを開始。最近の趣味は散歩とスーパー銭湯、家の掃除。

 

稀代の変哲
清水 煩悩(Shimizu Bonnou)

1992年生まれ、和歌山県和歌山市出身。2016年から活動をスタート。水曜日のカンパネラ・コムアイ、奇妙礼太郎、石川浩司、坂本龍一、長嶋りかこらが賞賛する音楽家。現在は2019年9月20日に103歳でこの世を去った“台湾独立運動のゴットファーザー”こと革命家・史明氏が開業した池袋の中華店・新珍味に居住している。

2016年11月、J-WAVEラジオSPARKにて水曜日のカンパネラ・コムアイに「天才じゃない?」と賞賛される。その後、2017年3月に自主制作盤『みちゅしまひかり』を発売、同年には奇妙礼太郎主催ライブ〈同じ月を見ている〉に出演。
2018年4月にP-VINE流通協力のもと、2ndアルバム『ひろしゅえりょうこ』がSNEEKER BLUES RECOREDSから全国リリースした。同年12月には小泉今日子がポップアイコンを努めるFODオリジナル音楽番組「PARK」でTV初出演を果たす。

2019年1月、下北沢 風知空知にてMusicVideo先行上映会&トークショーと題して製作関係者が一同に会したイベントを開催。その後、同年の秋に奥多摩の森で「まほう」「リリィ」の2曲を収録、むこうぎしサウンドのプロジェクトとして公開される。現在は新アルバム・MV制作のために150万円クラウドファンディングを実施中。それと連動し、10月からradioDTMの公式サイトで対談企画『煩算』を連載している。同月、坂本龍一がナビゲートするスペシャル・プログラム。2か月に一度、オンエアしているJ-WAVE「RADIO SAKAMOTO」にて、奥多摩の森で2曲30分一発録音されたライブビデオ「まほう」「リリィ」が優秀作として紹介され、坂本龍一や長嶋りかこが賞賛のコメントを贈った。

Twitter: https://twitter.com/shimizubonnou

Instagram: https://www.instagram.com/shimizubonnou/

Conversation Archive

『 煩算 』+1 田渕徹(音楽家)

『 煩算 』+2 長谷俊(囲碁インストラクター)

『 煩算 』+3 田代友紀(俳優)

『 煩算 』+4 アンジー、スティーブン(大学院生)

『 煩算 』+5 稲田ズイキ(僧侶)

『 煩算 』+6 石川彩香(武蔵野美術大学職員)

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