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クラウドファンディング連動企画 ▽池袋の中華料理屋に住むミュージシャン清水煩悩の対談連載企画『 煩算 』+4 アンジー、スティーブン(大学院生)

「稀代の変哲」とも称され、水曜日のカンパネラ・コムアイなどからも称賛を得るミュージシャン、清水煩悩が対談連載企画『煩算』をスタート。

音楽家、囲碁インストラクター、武蔵野美術大学職員、一橋大学社会学研究科 博士号課程、僧侶、芸術家、俳優、ラジオパーソナリティーといった様々なジャンルの「巷の人」をゲストに迎えつつ、足したり引いたり掛けたり割れたりしながらトークを展開。

来年リリース予定の3rdアルバムやミュージック・ビデオへと繋がるであろう本企画。

清水煩悩が、何を誰と語り合うのか、CAMPFIREで開始された150万円クラウドファンディングと合わせて、是非とも注目してほしい。

第4回目となる今回の収録場所は、清水煩悩が5階に住んでいる池袋の中華料理屋「新珍味」。

大学院で社会学を研究するアンジー、スティーブンをゲストに実施。台湾、オーストラリア、日本と国際色豊かに机を囲みながら対談するのは「クラウドファンディングというシステム 」「目標と妥協点」「生活に最低限必要なもの」など、様々なクエスチョンを社会から考える。

『煩算』第4回、お楽しみくださいませ。

 

クラウドファンディングというシステム

スティーブン(以降ブン):うまくいってんの?

煩悩:うまくいってない。でもね、CAMPFIREに出てる音楽カテゴリのプロジェクト全部見たんやけど、俺らは全然いい方かもしらん。大手の会社とかグループがクラウドかけてるとかっていうのやとまた別やけど。

アンジー:そもそも日本でクラウドファンディングをやることは一般的なの?

煩悩:どうやろう。なんかイメージ的に誤解されてる感じはあると思う。

アンジー:台湾では結構使われてる。高校のサークルでZINEを作ったりするときも、クラウドファンディングをしたりするし。台湾にもいろんなサイトがあって、メインなのは3つかな。

ブン:アメリカでも何個かメジャーなのあるよ。

煩悩:最初は「本当に自分たちの理念を守ってやるなら、自分のサイトで自分のクラウドを立ち上げたほうがいい」って考えてた。でも内藤君(インタビュアー・むこうぎしサウンド)が、そもそも大手の会社がやってるサービスって支援してくれる人も安心するんじゃないかって言ってくれて。それでCAMPFIREにしようってなった。

ブン:まぁやりやすいよな、そっちの方が。

煩悩:内藤君に言われるまでは、その気持ちは全然なくて。確かになあと思った。

−煩悩君の音楽は聴いたりしますか?

アンジー:聴いたけど、以前の楽曲は私の好みじゃなかった…。今回の奥多摩の森で撮ってる映像っぽい方が割と好き。ボンちゃんの声は、自然の中で聴くととてもいい。

煩悩:撮影の時に美術やってたちーちゃん(近藤ちひろ)が、撮影中に俺の演奏聴いて「気持ち良すぎて寝てた」って言っててそれがすごい嬉しかった。

 

「大きな目標のためにはある程度妥協しないといけない」?

−二人とのなれそめは?

煩悩:アンジーはもう覚えてないんよなあ。最初に会ったのはバイトのときで、今年の1月とか2月とか。アンジーも新珍味で働いてるんやけど、今はたまにしか入ってないね。最初は「音楽やってます」って話して、坂本慎太郎さんの話をした。それで会話がマッチしたというか。

アンジー:ゆらゆら帝国の『空洞』っていう曲があって、修論書くとき毎日この曲聞いてた。人生が空洞だから…(笑)。

ブン:そういう自虐的な表現が好きやからな、アンジーは。

煩悩:ちょっと前に「論文を書かないといけない、けど書けない」ということについて、三人でいろんな角度から話したんよ。俺やったら、アルバムや音楽を作るときにどうやってエネルギーを持っていくかとか。その時も、僕とブンさんは「いけいけー!」って感じやけど、アンジーはちょっと遠慮するというか。

ブン:いやでも俺も全然書けてないから。

煩悩:書けてない態度ちゃうやん(笑)。

ブン:俺は完璧主義やから、書けてないとどんどん固まって結局なにもできへん。でもね、それだけじゃ研究者にはなられへん。研究者はやっぱりどこかでメリハリをつけて文章にして、学会で発表してフィードバックもらって、ってしなくちゃいけない。
煩悩:二人は、自分の活動を人にどう説明してるんですか?どういう研究をしているかとか、どんなことをやってるのかとか。

アンジー:「移民研究やってます」とか、これで終わりかな。

ブン:僕は、「主に日本の難民認定制度をロヒンギャの観点からまず見て、最近はクルド難民の経験も併せて見たりしてるような感じです」みたいな。活動としては、面会活動とか無国籍ネットワークとの関わりを使って展示をしたり。最近は弁護士を紹介したりする、みたいなこともやっている。

 

アンジー:私はブンさんとも近くて、日本の移民現象とか階級格差に興味を持っているんだけど、それを研究にはしていない。研究は研究、活動や信念はまた別のところにある感じですね。

ブン:僕は難民のこと研究しているけど、研究が大きな政策の転換につながることはほぼないと思ってて。オーストラリアでは、有名な学者が政府にずっと提言してきた歴史があって、それでも政策を大きく変えられていない。だから自分ができることをやろうと思っていて、面会活動をオーストラリアにいたときからやっていた。

アンジー:面会活動は、入国管理局で収容された人たちに会って話すこと。前は二人でやってたんだけど、今は私があまり行けていなくて、彼は研究にも関わるから行っている感じ。私は主に中華系の人で、彼はいろんな人と。

ブン:イラン人とかクルド人とか。一応クルド人が研究対象者やけど、難民はみんな研究対象者やから。でも正直、クルド人のデータもほとんど使えないからね。

煩悩:なんで?

アンジー:会って励ますのが活動だから。それに、録音とかはその場はできなくて、できるのはメモだけ。それで毎回忘れちゃうから、実は私は毎回同じ質問にしてる。今は、私が面会した人たちは半分くらいが送還されたので、面会にも行く意味がなくなってきたかなって。

 

「生活に最低限必要なもの」

煩悩:この前、アンジーに「生活に最低限必要なものは何だと思う?」って聞かれて、「おにぎり2個」って答えたんです。それに対して、アンジーが言った「それはいろんなフィルターがかかってない?」って問いにハッとした。アンジーは「みんなに必要なもの」を聞いてたのに、「俺が必要なもの」やと思って、自分の答えしか言ってなかった。俺にはいろんなフィルターがある、ミュージシャンで、お金がなくて、少食とか。

アンジー:私は今31歳だから、周りの同級生や友達は社会人7〜8年目。そうすると、だんだん性格の差が出てきてる気がする。安定した仕事に就いている人と話すと、社会には決まったルールがあって、そこから抜けるためにはどうすればいいのか、みたいなことを考えている。

煩悩:そうそう。その話をしたときに、僕が調査対象になるかもって言ってくれて。僕がはみ出してる、みたいな。

アンジー:そう。「逸脱」について考えてたから。

 

ブン:それは社会学的な考えやね。社会の規範があって、そこを守って生活している大多数の人たちがいる一方、それを逸脱している人たちもいる。

煩悩:もう携帯も繋がってないですから。ほとんど社会性はない(笑)。

アンジー:普通じゃない人がどうやって生きていくか、とか考えてる。条件は人によって様々だけど、生活保護だったら条件は14万円。私だったら奨学金とか。

煩悩:その話もしたよね。例えば生活保護でもらったお金でパチンコだけやってたら批判されるけど、でも最大の幸福がパチンコ打つことで、食事より何よりパチンコさえあれば生きていけるって人やったら、生活保護には当てはまってるんじゃないの、って。

ブン:そんなパチンコ好きやったらだいぶやばい気がするけどな(笑)。人間らしい生活をするっていうことなのか、それともギリギリの水準で生きていくっていうことなのかだよね。

煩悩:アンジーの質問をすることで、その人の今の前提になってるものが洗い出されると思う。働いて安定した収入を前提としてる人だったら、多分「おにぎり2個」とは言わない。週に1回の競馬、とかいうかもしれない。

ブン:僕、難民で収容されていた人に、お給料が少なくて可哀想だねって言われたことある(笑)。

 

−その方は今何をされてるんですか?

ブン:今は家族と一緒に住んでるけど、仕事はできないような感じ。非正規滞在者は、非正規雇用でしか働けない。だから工事現場とかが多い。労働問題とか移民問題とか外国人問題とか、そういうのは全部つながってると思う。そういうのを、自分の研究の中でも活動の中でもうまく取り込んでいきたいなとは思うんやけどね。

日本は国民の大多数が農民だったのが、戦後になって急に地方都市から大都市に労働者が入り込んでいったっていう歴史があるからこそ、外国人労働者を受け入れる必要がなかった。でも80年代になるとそれでも足りなくなって、外国からの非正規労働者を受けてまかないつつ、日本人の非正規労働者も調整で使われてたっていうのがずっとある。研究の中でもそれは考えていて、なんでこんなに搾取されているのか、なぜいま急に取り締まりが厳しくなったのかとか。必要なくなったら排除できる存在であってほしい、という権力者の意図が見えてくる。そしてそれは、外国人労働者だけではなくて日本人の非正規労働者も苦しめている、という状況。

煩悩:音楽で言うと、ブンさんが言ってた時期って音楽でもすごく変動があったらしく。戦時中は音楽も規制されてたから、アメリカの音楽とかが入ってきてなかったんやけど、それがあけてから、そこまでは軍歌とかしかなかったのが、いま僕らが聴いてるようなポップスとかブギウギみたいなのが入ってきて。だから、そのくらいの時代のこと僕もすごい考える。聴けてたかもしれやん音楽が、そういう社会だったことによって聴けてなかったんやなあとか思うと今と大きく違うところやし。

 

勉強するほどわからない範囲が広がって、世界が広がる

−さっきのおにぎりの話じゃないですけど、生きるために必要なのが”おにぎり2個”って答える清水煩悩が、150万円くださいって言ってる事に対して、なんとなく危惧していて。

アンジー:私は、おにぎり2個しかいらない彼が150万円くださいっていうのは、すごく大きな決断だなって思った。

煩悩:おにぎり2個しか食ってないっていう、僕のそういう生活の側面をみんなは知らないかも。すごいときは、一番安い袋麺を6袋×5セットぐらい買って、それを全部粉々にして、お湯入れてスープにして食べてた。

アンジー:それを貧しいとは思ってない?

煩悩:全然思ってない。なんなら手軽でいいなあって。会社員時代はかなりの額もらってて、25歳くらいで40万弱くらいやったけど、まったくお金に興味がなくて。

ブン:やりがいを感じてなかったんや。それこそ、お金がもらえればそれでいいっていう人もいれば、物足りへんなって思う人もおるかもしれんし。俺の兄弟は結婚して働いてて、彼らから見たら俺は全然ダメな奴で、王道からは全部外れてる。でも俺は、そういう暮らし方にはまったく魅力を感じないかな。興味がないし、これからもそうしたくないし。でもそういう道を自分が選んだから、それに付随する不満も出てくるっていうのを覚悟して受け入れていかないと。

アンジー:私はやりたいことをやってるんだけど、それでもなお息苦しい。

ブン:一時期はそれですごく苦しかった、アンジーは未だに苦しいのかもしれないけど。僕はある時期から「もうどうでもいいや」と思ってて。それまで何を心配してたかというと、周りの人、例えば先生に認められるとか、そういうことを無意識に思ってたんやろうなって。でも本当は論文を書いて認めてもらわない限り研究者にはなれないから、顔色をうかがうのは無駄なんやなって分かった。

煩悩:ああ、わかる…。

ブン:勉強すればするほど自分がわからない範囲がどんどん広がって、世界が広がっていく感じ。高いところに登っていくみたいなね。「ここまで広がったけどここまで見える!あんな世界もあるのか!」って。これを見るための道具すら俺は持ってないっていうのが分かってきたりするから、それで謙虚さも覚えるし、分かることに対しての自信もできる。

アンジー:外国人の学術の世界でも、資源が限られてる。奨学金とか、研究者としてのポストとかの定数が決まってるから。そして、日本でポストをもらうために論文を何本出さなきゃいけないとか、そういうのがある程度あって、結局外の世界と実は似てる部分がある。

 

ブン:僕が言いたいのは、自分もそうやったからやけど、自分が思ったり考えてることをちゃんと発言した方がいいと思う。日本の学校は議論するテクニックとかを教えないから悪いんやけど。人間は弱いものが基本的に嫌いやから、萎縮したらどんどん叩かれるだけやから、俺は自分の意見をどんどん言っていった方がいいんじゃないかなって思って。

アンジー:私ゼミではたくさん発言するよ。

ブン:うん、だからアンジーは別に悪くないと思う。あと、論文の基準とかあんまり考えない方がいい。いちいち「自分の論文はよくない」って思う必要ない。英語のことわざで『いい論文は完成された論文だ。素晴らしい論文は出版された論文だ。完璧な論文はそのいずれでもない。』っていうのがあって。完璧を求めると何もできないということだよ。

煩悩:この話で言うと、クラウドを始めたことで僕に起こった現象として、あんな文章は消した方がいいとか、ミュージシャンがクラウドやるなんてとか、実際に言われたりした。その一見批判に見えるものに対しては感謝したいし逆に恩返ししたい。それより俺がマズいなって思うのは、言われる準備できてない人が多すぎる。俺は、言われるやろうなあって思ってた。けど、そういうフィードバックを読みたくない人がすごく多い。それっていいの?ってなる。俺はフィードバックを読んだり聞いたりしたいわけではないけど、自分の投げたボールが返ってこないのは嫌かなあ。とにかく、どう思われるかっていうのは一番どうでもいい。

 

アンジー:「どうでもいい」と思えるのはどうして?性格?

煩悩:性格ではないと思うけどなあ…自信があるから? 自信があるっていうか、もしかしたら僕が作った料理は不味いって言われるかもしれんけど、まずは一回食べてほしい。だって、不味いって最高やん。自分で食べて美味しいって思って出してんのに。自分で作って自信のある料理出して「不味い」って言われるのってすごい幸せなこと。

アンジー:ブンさんもそういうところちょっとある?みんなに知ってほしいみたいな。

ブン:それはあるよ。でもみんなのほうが聞きたくないしね、難民のこととか。伝えたいけど、青汁のまされたみたいな顔するからさ。「あー、難民のこと? 聞きたくなかったけど」とか「長期収容の問題ね、それは深刻だ。もっと楽しい話題はないかな?」みたいな(笑)。

 

あんなん流行らん

煩悩:勝手に自分で思い込んでるんやけど、ちょっと前にダンスミュージックみたいなのが一瞬流行ったのとか、8%に増税した時にちょっとアッパーな曲とか意味不明な歌詞の音楽が増えたのって、多分みんなパッパラパンになって踊りたかったんやと思う。考えずに生きる方が楽だろうなあという社会に直面してる感じ。みんないっぱいいっぱいになってる。

ブン:なんか一時期、オルタナティブバンドがフォークミュージックっぽくなってたやん。あぁいうフォークっぽいけど違うみたいな。俺はあんまり好きじゃない。

煩悩:すごく簡単にいうと、混ざりすぎてるというか。

ブン:もちろん混ぜて新しいものができるのはいいかもわからへんけど、なんかよくない。俺は嫌い(笑)。好みやからね、好きな人は好きでいいよ。新しいものと古いものを合わせて作るというサイクルがあるし。

煩悩:リバイバルなあ。

 

ブン:資本主義の時代でそのサイクルがどんどん加速していってる。今はいろんな音楽が同時に簡単にインターネットで手に入ってしまうから、ラジオで流れる音楽から何かが手に入るととかとはちょっと違うやんな。それこそクラウドファンディングをやってるっていうのも、ぼんちゃんが作るマニアックな音楽を聴きたいと思うような人がいて。だって、悪いけど流行らんやん。車で聞きたいってならんやろ?でもそういうのを聴きたいっていう人がいて、実際に聴けたりとかそういうのができる時代よね。

煩悩:俺が言おうとしてること、ブンさんがばっちり決めてきた。なんで対談をお願いしたかっていうと、二人はちゃんと「嫌い」って言ってくれる人やと思うんよ。その理由もちゃんとあって、俺は嫌いって言われてもぜんぜん嫌じゃない。ブンさんの話とかまさにそうで「あんなん流行らん」とか、もうめっちゃ最高。

ブン:俺はK-POPとか大嫌い。たぶん大学院生のYoutuberが、いろんな哲学をわかりやすく説明してくれるチャンネルがあるんやけど、大衆音楽の批判とかもやっていて。その中で、K-POPみたいなポストモダンのポップスの生産状態をフランクフルト学派とマルクス的な資本主義批判で考察する動画があった。それでK-POPがいかに非人道的かみたいなのを言っていて。アーティストとしてのクリエイティビティも踏みにじられて、徹底的に監視されて仲間もみんな競争相手にさせられるっていう。僕は世の中にはなかった方がよかったものもあると思うよ。強制収容所とかもそうだしね。K-POPもポップミュージシャンの強制収容所やから。

煩悩:K-POPの世界的な普及に併せてか、韓国のインディーロックってめちゃくちゃレベル上がったのかも。ちょっと前まで韓国のインディーロックなんかみんな何も言ってなかったと思う。

ブン:それはいいことやと思う?

煩悩:いいことやとは思わん。

ブン:クオリティが上がればいいのかっていうことだよね。清潔じゃないといけないっていうのと一緒やん、手を洗うのにアルコールまで使わないといけないとか。なんでそこまで殺菌せなあかんの、みたいな。石鹸で手を洗うことによって簡単に人が死ななくなったっていうのはあるから、大事な進歩やったっていうのもあるけど、今はそれが行き過ぎて。子どもなんかちょっと転んだりとかして泥かんだりするくらいがちょうどいいのに。

 

煩悩:ある程度いろんなルールがあると思う。売れるための音楽とか、こういう音楽がこういう層に流行るとかあると思うんやけど、絶対どこかでひっくり返ると思ってて。音楽で言うと、自分の好きな音をみんなに発表してる人達が今後絶対に評価されると思う。映像も絵も文も、研究でもなんでもそうやと思うけど、自分が「これや」ってと思うものを表現したり、前に出て発表したりっていう人が絶対評価されるべきやなって思う。型にはまってない人かもしれなくても。

ブン:売れないけどね。

煩悩:でも、そうあるべきやと思う。だから俺は、さっきの話に対してはいいことではないと思う。

ブン:でも、メインストリームになるときれいになる。クラシックだってもっと緩い感じやったのが、どんどん型にはまっていって楽譜通りに弾くしかない、みたいなものになってしまったけど、作曲家は当時演奏するときとか、アドリブ入れたりしてたと思う。ジャズもブルースもそうでしょう。だんだんと「こんなふうにやらなきゃいけない(演奏しなきゃいけない)」ってなっていく。

アンジー:それを「やらなきゃいけない」の理由は、やっぱり資源と繋がってるなと思ってて。もしある程度の生活の基盤があったら、好きなように作って、好きな人だけに聴いてもらって、っていうだけでもよい。けど、売れないから。

 

でもいいよ、別に優秀じゃないし

煩悩:本当に自分がやりたいこととか、みんなふわっとあるように思う。それを見つけてない人の方が大半かもしれんけど、仮に僕が見つけてる側におるとしたら、いつ死ぬかわからんから最善の策をなるべく一歩でも踏み外したくないっていう気持ちがある。踏み外していいと思ってたら、アンジーの質問に「1日3食」とか適当な事言ってたと思う。俺はそこをシビアにとらえてたから、おにぎり2個っていう、客観的に見たら少ないと思えるようなことを言えたのかなって。それが今回のクラウドにも繋がってるなって。もういつ死ぬかわからんから最善の策はとっていきたくて、それがクラウドファンディングやった。アンジーとかブンさんもそうやって現段階でやりたいこととか、やれてないけどやりたいこととかあるのかなって聞きたい。

アンジー:私は台湾にいたときにドキュメンタリーを撮ってたんだけど、それを諦めて、日本に来て学術の道に進んだ。それをずっと、まだやりたいなって思ってる。当時撮っていたのは、台湾の80年代のジャズミュージシャンの話。でも同じテーマでとりたいわけじゃなくて、映像を撮りたい。

ブン:あの作品、僕はおもしろいと思った。自分で撮りたいと思ったものなんやろうし、技術的な面とか僕はわからんけど、ストーリーはおもしろかったよ。

アンジー:私は人にすごく興味があって、人を表現できる一番の方法は映像だと思ってる。

ブン:あの映像はそれが伝わるよね。あとおもしろかったのは、一時期こういう音楽が流行って、それに憧れたミュージシャンたちがその道を突き詰めていこうとしたんやけど、食べていくためにはこうしなきゃあかんかったとか、ある人はミュージシャンを断念したり。ひとりすごい現実的なこと言ってたよね?そういう現実的な言葉だったり、いろんな意見をしっかりととらえてた。

アンジー:お葬式で演奏したりしてるんだよね。日本で言う、流し的なことをやってる人もいる。

ブン:日本の状況に似ていて、アメリカのバンドにみんな憧れて、アメリカ軍のために演奏してた人たちがそうやって活動を始めたんだよね。あの映像はすごく勉強になった。そういった人たちがどうやって衰退していったのかとかが分かったから。インパクトがあったから記憶に残った。伝え方が上手だなって思うから、僕はアンジーにもっと映像とか作ってほしいなって思う。

 

煩悩:俺はその映像を観てないんやけど、分かったことがあって、その映像の話をしてるときのアンジーの顔がいつものアンジーと違った。そこからすごくアンジーに対しても興味が湧いたというか。ブンさんはなにかやりたいことはある?

ブン:研究者には…なりたくないと思ってる。

煩悩:なんで?

ブン:無駄な競争に巻き込まれたくないから。つまりどこかの大学で教員になるということやけど、教員になるには論文を出さなあかん。それ自体は研究者としてやるべきことやからいいんやけど、僕の場合は群馬とか埼玉に住んでる難民の研究をやってるのに、教職を手に入れるためにいきなり九州とかに行ったらやりたいことはできない。柔軟に考えたらそれもできるかもしらんけど、地域との繋がりを断絶して教職を得るていうのは違う。でもそこまでしないと教員のポストは本当に空きがないから行かざるを得ない。だからおにぎり2個じゃないけど、これくらいのお金があれば生きていけるようにどうすればいいかって考えてる。日本に残るのであれば、在留資格を取るためにやってて嫌じゃない仕事をやりながら、独立研究者として研究としてやっていきたいかなって。それってダメな奴って印象があるけど、でもいいよ、やりたいことをやり続けたい。面会活動も難民に関わる運動とかもやり続けたいし。だから、そういう形を選ぶ。

煩悩:ずっと内藤君には「内藤君とブンさんが似てる」って言ったけど、そもそも俺とブンさんが似てたんかも(笑)。

 

 

 

Interview|Yamaguchi Nanako,Naito Manabu

Edit Assistant|Baba Satomi

Photographer|Zenitani Yuuki

 

 

 

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残 32日!【清水煩悩3rdアルバム&MV制作】奈良県天川村レコーディング!雪山でMVを撮りたい!

来年、清水煩悩は3rdAlbumをリリースする予定です。今回はそのレコーディングを〈天の国〉と呼ばれる奈良県天川村で行い、「まほう」という楽曲のミュージックビデオを雪山で撮影する為に、本プロジェクトを立ち上げました。支援を通じて様々な人を巻き込みながら、完成度の高い作品を皆様にお届けしたいです。ぜひ、CAMPFIREプロジェクトページの〈もっと読む〉から本文を読んでください。


https://camp-fire.jp/projects/view/198665

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Profile

大学院生
アンジー(Angie Chang)
生年月日:1988/6/1
研究内容:池袋の中国人

 

学生、プータラ、自由人
スティーブン(Stephen P. McIntyre)

生年月日:1982年4月25日
研究内容:日本の入国管理と難民認定申請制度、難民の経験する移民政策、被強制移民。
好きな言葉:”Dealings with others bring about self scrutiny” Franz Kafka

 

稀代の変哲
清水 煩悩(Shimizu Bonnou)

1992年生まれ、和歌山県和歌山市出身。2016年から活動をスタート。現在は2019年9月20日に103歳でこの世を去った“台湾独立運動のゴットファーザー”こと革命家・史明氏が開業した池袋の中華店・新珍味に居住している。

2016年11月、J-WAVEラジオSPARKにて水曜日のカンパネラ・コムアイに「天才じゃない?」と賞賛される。その後、2017年3月に自主制作盤『みちゅしまひかり』を発売、同年には奇妙礼太郎主催ライブ〈同じ月を見ている〉に出演。
2018年4月にP-VINE流通協力のもと、2ndアルバム『ひろしゅえりょうこ』がSNEEKER BLUES RECOREDSから全国リリースした。同年12月には小泉今日子がポップアイコンを努めるFODオリジナル音楽番組「PARK」でTV初出演を果たす。

2019年1月、下北沢 風知空知にてMusicVideo先行上映会&トークショーと題して製作関係者が一同に会したイベントを開催。その後、同年の秋に奥多摩の森で「まほう」「リリィ」の2曲を収録、むこうぎしサウンドのプロジェクトとして公開される。現在は新アルバム・MV制作のために150万円クラウドファンディングを実施中。それと連動し、10月からradioDTMの公式サイトで対談企画『煩算』を連載している。同月、坂本龍一がナビゲートするスペシャル・プログラム。2か月に一度、オンエアしているJ-WAVE「RADIO SAKAMOTO」にて、奥多摩の森で2曲30分一発録音された清水煩悩のライブビデオ「まほう」「リリィ」が紹介される。

Twitter: https://twitter.com/shimizubonnou

Instagram: https://www.instagram.com/shimizubonnou/

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『 煩算 』+1 田渕徹(音楽家)

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